さくら
「しーちゃんならどんな人だって選べる、わたしを選ばなくても・・・・!」
「桜子!!」
痛いくらいに両腕を掴んで屈んだ志信が桜子の顔を真っ直ぐに見る。
「お前、オレの愛情をバカにしてるやろ!」
そう言った志信が桜子をまるで樽か米俵かというように肩に担ぎ上げた。
「志信、仮にも父親の前で大胆やな」
真野が呆れて苦笑する。
「見て見ぬ振りしてください。責任は目一杯取るつもりやから」
志信が大股でリビングを出て2階の自室へ行くつもりなのか階段を上り始めた。
「し、しーちゃん!?」
乱暴にドアを開けてベッドの上に放り投げられる。志信もベッドに上がり、桜子に躙り寄った。
さっき貴子に叩かれた熱を持った桜子の頬に志信が指を這わせる。
「もう大概にしとけ」
「・・・・・・・・・・?」
「いつもいつも周りばっかり気を遣い過ぎや。オレはお前が好きや、世界中を敵にまわしたって手放すつもりは無い。桜子の幸せが最優先やろ」
志信が親指の腹で桜子の目元を拭った。
知らず知らず涙が流れていたらしい。