さくら
桜子が8歳のとき、シングルマザーだった未散が事故で亡くなった。祖父母も既に亡く、遠縁のおじに引き取られていたらしいと桜子が来る前に志信は聞かされていた。
「桜子ちゃん、お風呂に入ってさっぱりしようか」
小さくうなづいて桜子は母親に連れられて行った。
おとなしい子だな、というのが第一印象。身体に合わない服を着せられて、髪の毛も結んではいるものの、伸ばしっぱなしなのは気になったけれど・・・・・。
「あなたーーー」
藤子が真っ青な顔をして、涙を浮かべてリビングに戻ってきた。
「母さん?」
聡志は薄闇に包まれていく窓の外を眺めていた。
「あの子の身体・・・・・痣や抓られたようなあとがいっぱいで・・・・・」
聡志の顔がいつになく厳しい。温厚な父親にしては珍しいなと志信は思った。