さくら
「遠慮せんと高校も大学も行ったらええんやで。桜子ちゃんの1人や2人、大学までやるくらいの甲斐性はあるつもりやし」
聡志がわざと軽い調子で言う。
心を温かいものでいっぱいにしてくれて、この優しい人たちにわたしは何が返せるのだろう・・・・・結局、高校を卒業して大学の看護学部にまで進ませてもらった。
桜子は片時も、後藤家の人々に感謝を忘れることはなかった。
心臓が悪かった藤子が倒れたのは桜子が高校1年生の冬。
志信の病院に入院した藤子の元へ桜子は毎日通った。
白い無機質な病室が少しでも明るくなるように花を飾り、学校であったことを明るく話す。
「藤子お母さん、病院の食事ばっかりやと味気ないでしょ?少しお弁当作ってきた」