さくら
「いやあ、美味しそう。せやけど桜子ちゃん、こんなに食べられへんわよ」
藤子の好きなだし巻き、筑前煮、鶏の照り焼き、巻き寿司にお稲荷・・・・・
「藤子お母さんの好きなものって考えて作ってたらこんなになってしもた」
点滴の刺さる段々と細くなっていく腕が切なくて、せめて好きなものを食べて過ごして欲しいと願った桜子のお弁当。藤子はお皿に少しずつ取った。
「残りは志信に持って行ってやって。毎日インスタント食品とコンビニ弁当だって嘆いてたから」
「しーちゃんに?」
志信は仕事が忙しく、病院の近くでマンションを借りて一人暮らしをしていた。
「今朝会ったときは日曜日なのに今日は1日病院やって言うてたから医局にいてるんとちがう?」