さくら


桜子の10歳年上の志信に、恋人がいないはずがないとは思っていた。けれどなんで自分がこんなにショックを受けているのか桜子にはわからない。


妹としての兄に対する独占欲・・・・・?


「知らなかったか?志信の彼女。オレらと同級生の津村倫子」

朝倉さんの言葉が自分の上を通り過ぎていくような気がした。

「しのーーーー」

志信を呼ぼうとした朝倉の白衣をキュッとひっぱり止めた。

「折角楽しそうなのに邪魔したくないから・・・・・これ、お弁当です。沢山あるから良かったらしーちゃんと食べてください」

朝倉にお弁当の包みを渡して、くるりと踵を返した。

志信には志信の世界があって、桜子の知らないことだってあって当たり前だ。ましてや志信はもう大人で、あの家にお嫁さんだって連れてくるはず。
< 36 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop