さくら
桜子を引き取るときに、後藤の親戚の中には良い顔をしない人もいた。その筆頭格がこの聡志の従姉妹である貴子だ。
立ち聞きになってしまう・・・・・桜子はそっとその場を離れた。藤子の元へ行きたかったけれど、藤子の悲しい顔を見たくなかったから。
病棟の自販機コーナーでコーヒーを買い、椅子に腰掛ける。大丈夫・・・・・こんなことで傷ついたりしない。おじの家にいた頃だって散々邪魔者扱いされて慣れているから。暴力を振るわれないだけ、貴子の方が100倍マシだ。
温かかったコーヒーがすっかり冷たくなるのに気付かないほど長い時間ぼんやりしていたらしい。戻らないと藤子が心配するーーーようやく思い至って腰を上げた。
「桜子!」
廊下の先から志信が呼んだ。