さくら
「『手ぇ出したら殺すぞ』やってさ」
「しーちゃん、骨の随まで『お兄ちゃん』だから。朝倉さんもでしょ」
朝倉が肯定するように目尻を下げ、桜子の顔を見て吹き出す。
「おチビ、鼻の頭と鼻の横にクリームがついてる」
「やだっ!」
慌ててティッシュを取り出す。
「貸してみ」
朝倉が桜子の手からティッシュを取って顎に手をかけて上を向かせる。
「ーーーーーお前ら、何してんの?」
部屋の入口から不機嫌な声。
「なんや、志信。邪魔すんなよ、いいとこやのに。なあ桜子」
朝倉が志信に見えないように舌を出し、さっと鼻の頭と鼻の横のクリームを拭き取ってくれた。
「朝倉〜〜〜〜っ!」
「妹の恋路を邪魔するアニキは嫌われるで」
「恋路っ!?」
桜子が自分用に入れていたまだ手をつけていない紅茶を志信に渡す。