さくら
「ウチには最高の主治医もいてるでしょう?」
泣くなーーーー!
桜子は自分に必死に言い聞かせる。握られた手は温かくて、そこから藤子の想いが流れこんでくるような気がした。
こんな白い箱のような部屋より家がいいよね。
もうすぐ中庭の桜も咲く。いつものように一緒に見よう・・・・・・・・・・。
宣言通り、藤子は家に帰ってきた。嬉しそうに部屋から中庭の桜を見上げる。
志信も時間が許す限り、マンションではなく家に帰ってきていた。
「家族の中にいるのがいちばんええわーーーーー」
小さな声で呟かれた言葉が桜子や志信や聡志の心に染み込んでいく。
念願の桜が咲くと、子供のように藤子がはしゃぐ。
「未散ちゃんもこの桜が大好きだったのよーーー」