さくら
バスルームに急いで行き準備をする。いつ志信が帰ってきてもいいように下着も部屋着も新しい物が買ってある。
志信が帰って来てくれただけで、心強くて安心する。
子供の頃から志信は桜子の兄同然だった。初めてこの家に来た時から変わらない穏やかな人。
「良かった・・・・・・・・・・」
つい安堵のため息が漏れる。
志信は大学病院の医師だった1年半前、急にケニアの医療ボランティアに参加すると言って日本を後にした。
そんな志信を、後藤医院の院長である父親は
「若いときは何でもやったらええ」
と笑いながら送り出した。
本当は跡取りとして医院に帰って来てほしかったんやないかな・・・・・と桜子は思ったけれど、言える権利などなかった。