さくら
四
「なんや、志信その頭は」
幼馴染みの達也が父親から後を継いだ美容院に行くと開口一番に言われた。
「おんなじこと言うたるわ。お前こそそのアフロはなんやねん!」
「ハゲ隠しよ」
横から達也の嫁でやっぱり幼馴染みの美咲が笑う。
「なんや35でもう頭髪が寂しいんか」
「うるさいわ!遺伝や!ごちゃごちゃ言うてるとお揃いにするぞ」
達也も美咲も志信の小学校時代の同級生だ。志信だけ受験をしたので中学からは別々になったが、ずっと仲良くしている。
「ありがとな。オヤジのカットにちょこちょこ来てくれてるんやってな」
「どうってことあらへん。今までウチの将太の喘息の発作がおきたら夜中でも日曜でも関係なく診てもろた礼や」