さくら
「まだ喘息出るか?」
「ああ、今は休日診療所や救急病院探して行ってる」
「しばらくしたらオレが医院開けるし、もうちょい不便を我慢してくれ」
「お前、大学病院戻らへんのか?」
「もともと継ぐつもりやったし」
「ほうか、そら先生も桜子も喜んだやろ」
軽快にハサミを動かす達也と鏡越しに会話する。
「なんかこんな状態になるまで帰って来んかって、誰も責めへんのが肩身が狭いわ」
志信が苦笑する。
「そんなことは誰も責めへん。仕事やししゃあないからな。けどお前桜子には感謝しろよ」
「ホンマやで。家のこと、医院のこと、先生の介護までちっこい身体でよう頑張ってたわよ」
隣で近所のおばちゃんの頭にロットを巻きながら美咲も口を出す。