さくら


約束した時間より早く着いた。

南側の壁が全てガラス張りの大学病院の食堂には小春日和の暖かい柔らかな日差しが差し込む。

志信はコーヒーを飲みながら朝倉を待っていた。

「すまん、志信。待たせたな。外来が長引いてしもた」

「いや、オレが早く来すぎただけや」

朝倉が定食のトレイを志信の向かい側の席に置き、慌ただしく座る。

「教授に挨拶済んだんか?」

「済んだ。頑張れってさ」

「愛想あらへんな。ホンマはめっちゃ引き留めたいくせに」

朝倉が味噌汁を啜りながら笑う。

「事情を知ってるからやろ。あの人オヤジの同級生らしいし」

「おチビ、喜んだやろ。お前がケニアに行ってる間に何回か様子見に行ったけど心細そうにしとったから」
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