さくら
六
書けばベストセラーになるし、評価も高い。気まぐれにしか書かず、寡作な作家。
「そろそろ連絡せんとな・・・・・」
もう何度も読み返した本を閉じてベッドサイドにポンと置いた。帯には日本では有名な文学賞受賞作品と書いてある。
聡志がやり残した最後の仕事は、この本を書いた彼に会うことーーーー。
「ミュージカル?」
桜子がキョトンとする。
夕食の後、聡志と志信とリビングでお茶を飲んでいるときに切り出された。
「朝倉が一緒に行かへんかって」
「ええやないか。僕が言うのも変やけど、家に閉じこもってばっかりおらんとデートの一つもしておいで」
「デートって先生ーーーー!」
「朝倉くんやったら安心してられる。志信のいてへんときにもよう様子見に来てくれたしな」