さくら
桜子の背中に回した手をゆっくりと上下させ、志信が小さく笑いを漏らす。
「いつの間にか『志信さん』なんて気取った呼び方になってたけどやっぱりそっちの方がしっくりくるな」
「いつまでも子供みたいに呼んでたらあかんと思ってーーーーー」
桜子はとうとうしゃくり上げ始めた。
自分がいない間、誰にも弱音を吐かず、ひとりで頑張ってきた桜子。志信が力を込めると簡単に折れてしまいそうな腕の中の華奢な身体のどこにそんな強さがあったのか・・・・・。
「志信さん」と呼べときっと誰かに言われたのだと容易に想像できる。そんなことさえ自分に打ち明けたりしない。「子供みたい」と言って気を遣わせないようにする。
桜子が可愛くて、愛しくて・・・・・。
志信の胸にしがみついて泣き止まない桜子の顔を、顎の下に手をかけて持ち上げる。