さくら


「やべぇ、志信に怒られるな。9時には帰すって約束したのに」

車内時計のデジタル表示はもうすぐ10時になろうかという時刻を示している。

「大丈夫。しーちゃんにはわたしが上手く言うから」

朝倉が門の前に車を止める。

食事が終わった後、泣いてしまったわたしを落ち着かせるために車を長く走らせてくれたから遅れたのだ。わたしのせいなのに朝倉が責められていいわけがない。

「ほなな、桜子。オレは別に志信との友達関係を壊すつもりはないし遊びにも来るから、暫くは気まずいやろうけど普通にしてて」

「そんな・・・・・朝倉さん。わたしこそごめんなさい。今日はありがとうございました」


どこまでも優しい人。
朝倉を好きになっていたら、わたしはきっと幸せになれたのに・・・・・。
< 89 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop