さくら
「所有・・・・・印・・・・・?」
壁に縫とめられた桜子の顔に影が落ちてきて、唇が乱暴に何かに塞がれた。
それが志信の唇だと、桜子が認識したときには志信のキスは一層深くなっていた。
朝からイライラのし通しだった。
起きてくると桜子が達也の手で綺麗に変身させられていた。
朝倉と出掛けるのに志信が見たことのないような可愛い桜子。何となく面白くなかった。
その上達也の言葉が志信の不機嫌に拍車をかける。
笑顔で送り出したものの、実のところは心の奥底に何か澱でも溜まっているような、そんなスッキリしない気分だった。
桜子が作っておいてくれた昼食を聡志と食べている時も、自分の気持ちを持て余してつい無口になる。
「志信」