さくら
聡志が声をかける。
「ん?」
「そんなに朝倉くんと桜ちゃんが出掛けるのが嫌やったんならお前が桜ちゃんを連れ出してやったら良かったのに」
「いや・・・・・嫌ってわけやないけど・・・・・」
「そんな不景気な顔して嫌やないのか?」
聡志が面白そうに言う。
聡志に揶揄われているのは分かっているけれど、図星をつかれて言葉に詰まる。
「志信、ぼくはな、桜ちゃんを幸せにしてくれる男やったら誰でもええのや。いつも笑顔でいさせてくれる男やったら喜んで桜ちゃんを託すで」
「それはオレだって・・・・・」
「ぼくは幸せにしてくれるなら誰でもええって言うたからな。覚えといてや」
ご馳走さん、と聡志が席を立って部屋へと戻って行く。
志信の横を通るときに、ポンっと肩を叩かれた。