さくら


桜子が幸せになれるなら、誰でもーーーーーー。

志信の心がザワザワと揺れる。


9時には帰すと約束しておきながら、9時を過ぎても帰って来ない。

学会誌を読んでおこうと広げるけれど、ちっとも頭に入って来ない。10時前になってやっと桜子が姿を見せ、遅くなったことを詫びる。

目を合わそうとしない桜子の態度を不審に思う。

頤を掴んで自分の方に向かせる。

明らかに泣いた後の瞳。

理由を問い質すけれど朝倉を庇う言葉しか発さない桜子にカッとする。


そして、志信が桜子の肌に朝倉の痕跡を発見した。



頭に一瞬で血が上った。



気がつけば桜子を壁に押し付けて強引に唇を塞いでいた。



貪るように

志信の怒りを思い知らせるように。
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