さくら
九
明け方、桜子は目を覚ました。
一瞬、自分がどこにいるのかわからなくなったが、昨夜聡志が激しい痛みを訴えて志信と必死で手当てし、落ち着いた後も心配でベッドの横についていたのを思い出す。
いつの間にかベッドに突っ伏して寝てしまっていて、肩に毛布が掛けられていた。
ベッドサイドの小さな灯りがついていて、聡志の顔を窺う。
顔色は決して良くないけれど、それでも規則正しい呼吸音が聞こえてホッとした。
点滴の残りを確認して、そっと部屋を出る。
昨日はお風呂も入っていないし、服さえそのままだ。
朝御飯の用意をする前にお風呂に入ろうかと考えながら、いつものように雨戸を開けるためにリビングに入る。
桜子の足が止まった。
まだ薄暗い、朝靄が立ち込める中庭に顔を向けた志信が窓辺に静かに立っていた。