21時の憂うつ
21時の女

いま、自分の身に何が起こっているのかを考えてみた。

鼻をかすめる品のいい爽やかな香り。

目の前にある男物のワイシャツとネクタイ。

背中に感じる腕が私の体を押し付けて、全身を逞しい胸板に預けているような感覚だ。

宙に浮いたままの私の手は居場所を見付けられていない。

それってつまり、これが当たり前の状態じゃないってことでしょ?

どういうこと?

少し記憶を辿ってみよう。

私がこんな状況に陥る前、確か腕を強く引っ張られたのだ。

何で引っ張られたんだっけ。

そう、私はいつも通りのことをしてたのよ。

いつもと同じ様に、1人で。

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