21時の憂うつ
「商品企画に連れていかれた日比谷を取り戻そうとずっと動いてる。知らなかったのか?お前に異動の意思は無いと蹴られてたって聞いた。」

初めて聞く話に私は思わず目を見開いたまま首を横に振った。

「…いえ、そんなこと。」

「だよな。今ので分かった。」

そう言うなり先輩はコーヒーを飲み干して勢いよくゴミ箱に放り込んだ。

その様子に何かを期待してしまい鼓動がだんだんと速くなっていく。

「姫君の愁いの時間は終わりだ。一気に動くぞ。」

「動くって…。」

「今から営業企画の部長の所に行く。」

先輩は私の手を掴むと力強く引っ張ってそのまま歩き始めた。

あまりの展開に付いていけない私はただ混乱と戦いながら先輩に引っ張られ続けている形だ。

「せ、先輩!あの…。」

「大丈夫だ、絶対に日比谷を引き抜いてやる。その計画を今から立てに行くんだよ。」

「は…あっ!?」

突然の爆弾発言に私は思わず間抜けな声を張り上げてしまった。

なにこの人、今さらりと凄いことを言わなかった?

「俄然やる気出てきた。これ決めたら俺絶対株が上がる。」

混乱する私に気付いていないのか、気付かないフリをしているのか、お構いなしなのか。

先輩は前で楽しそうに盛り上がり始めているのはどうしてなのだろう。

ちょっと本気?本気なの?

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