21時の憂うつ
そう、私。

「先輩。私、変われますか?」

「やるんだよ。このままあの部署にいたらお前、あの上司を呪い殺しかねないぞ?」

こうやって強い意思と行動力で進んでいく先輩を尊敬していたんだ。

諦めるなんて勿体ない。

「そうですね…ありがとうございます。頑張ります。」

先輩が満足そうに笑ってくれる。

息苦しい場所から抜け出して自分の居場所をもう一度手にするんだ。

いいように使われるなんて私が勿体ない。

そう思えたら心も体も軽くなり、自然と笑みがこぼれてきた。

「おっ?いい顔だ。やっぱ日比谷は笑ってた方が可愛いぞ。最近のお前は土偶のような顔で窓の外を眺めてたしな。」

あれはもう不憫で不憫でと続けられた言葉に何も返せず真っ赤になる。

土偶とは言い過ぎでも確かに辛気くさかったのは認めよう。

俯きながら引っ張られていると、手を引く力が弱まったのを感じて私は顔を上げた。

足が止まって先輩の空いている方の手が私の頬に触れる。

「いいね、俺。いい仕事をした。」

真近くで覗きこむ強い眼差しに顔が赤く染まってしまった。

不意打ちなんて、ズルい。

「よく覚えとけよ、日比谷。俺は全部取り派なんだ。やりたいことは全部やる。」

「ぜ、んぶ?」

「日比谷のことも、手に入れるからな。」

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