21時の憂うつ
もう何て答えていいのか分からず、ただただ顔を赤くしたまま瞬きを繰り返した。

どうしよう。

多分、私いま本気で口説かれている。

「幸いにも元より日比谷は俺のこと好きそうだから時間の問題だろ。」

「なっ!?」

反論したい私の気持ちなんかお構いなしに先輩はまた私の手を握ったまま歩き出した。

「わ、私が三島くんの告白を快諾したとは思わないんですか!?」

「ないな。だったらあんなため息吐かないだろ。それに三島に対しては違う感情を持ってた筈だ。」

「違う感情?」

「頼むからもっとしっかりしてくれ、ってさ。だろ?」

一言一句違わないなんて奇跡あると思いますか?

まさにそれは私が常に三島くんに抱いていた気持ちだった。

目と口を開いたまま返す言葉もない私を横目で勝ち誇る。

これが営業の技なの?

それとも梅井八雲の力?

正直逃げ切れるような気がしない。

時おり合わせてくる余裕のある視線に私の心臓は跳ねっぱなしだ。

「助けて…身が持ちそうにない。」

私の戦いは始まったばかりなのに。


人気の少ない21時の休憩スペース。

明日はきっと、2つのことでため息を吐く。



***21時の憂鬱
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