21時の憂うつ
「コーヒーでも飲むか?奢ってやる。」

「さっきコーラを一気飲みしたのでお気持ちだけ頂きます。」

そう、今日はこの場所に来るなり、ほぼやけくそに紙コップに入ったコーラを飲み干し、揚句残った氷もガリガリと噛み砕いた位だ。

一気に体が冷えたのでそこそこで止めておいたが、それ位に気持ちは乱れていた。

「…これはまた妙な勢いだな。何かあったのか?」

「…いえ、別に。」

「嘘つけ。お前俺が来たらすぐに席に戻ろうとするくせに今日はそこから動こうとしないじゃねえか。何かあったんだろ?」

言われたことが図星で私は返す言葉を失くしてしまう。

そう、だいたいは先輩が現れると私はすぐに自席に戻っていた。

元はと言えば1人になりたくてここにいる訳だし、あまり逃げている姿を人に見られたくなかったからだ。

でも今日は少し違う。

席に戻りたくない気持ちの方が強くて動けない、今日の現実は少し厳しい。

黙って口を一文字にしていると梅井先輩は少し距離を縮めて声を潜めた。

「聞いてやるから言ってみ。その様子じゃ誰にも言ってないし言える相手もいないんだろ?」

買ったばかりのコーヒーが入った紙コップを持って先輩が私のすぐ隣にやって来る。

どこまでも逃げ続けるように窓の外ばかりを見つめる私とは違って先輩は窓に背中を預けた。

たったそれだけの仕草でも少し敗北感を抱いてしまう。

これだけの差、それは少しなのか多くなのか、同じ主任としての器量の差があるのは確かだった。

だから先輩と会う度に感じるし思うんだ。

私って、一体何なのだろうと。

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