21時の憂うつ
「…新しく派遣で入ってくる子がいたんです。若い女の子。」

何で口にしてしまったのかは分からない。

でもそうしたことで気持ちは少し解放されたようだ。

自分でも無意識の内に口から零れてきた言葉は止められそうになかった。

「昨日からだったんですけど、私は1日中出張で席を外していまして。だから今日が初対面になる予定だったんです。」

「だった?」

「昨日で辞めたそうです。」

「はあ!?」

隣から先輩の強烈な眼差しを感じるが私の視線は眼下のネオン街に向けられたまま動かなかった。

動く気が無かったというか動く気力が無かったというか、そこはまた微妙なところだ。

「部長のセクハラ発言と、多すぎる業務内容と、お姉さま方とのお節介に見切りをつけたようで。…無いわという捨て台詞を残して昼過ぎにはいなくなったと聞きました。」

隣にいる梅井先輩が言葉なく驚いている様子が空気だけで伝わってくる。

そして何かに気付いたのか先輩が探る様に体勢を変えたかと思うと声を潜めて尋ねてきた。

流石は勘のいい人だ。

「…まさか、ソレを全部日比谷のせいにされてるんじゃないだろうな。」

「一応世話係に任命されていましたので。」

「…っマジかよ!?」

「苦情で今日の業務の殆どが潰れてまだまだ仕事が残っている状態です。」

「主任の責任じゃないだろそれは…どうなってんだよお前の部署。」

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