21時の憂うつ
それを常日頃から思っているのは先輩ではなく私なのだと言いたいところでも、今日の所はこれ以上何も言いたくなかった。

状況も分からないまま上司に呼び出されるなり文句を言われ、お前の責任だと散々お叱りを受けた。

ここぞとばかりに普段の振る舞いにもケチをつけられた揚句に俺のおかげで働けているのだと押しつけがましいことも言われたのだ。

それだけで午前中は潰れた。

昼休みにやっと部下から昨日の状況を聞いてようやく理解したのだ。

ああ、あの上司は自分の好みの女の子が去ってしまった事に腹を立てているのだと。

まだ顔を見たことも無ければ言葉を交わしてもいない、そんな人の責任を取れと言われても気持ちが付いていかなかった。

上司のセクハラが事の始まりだと知れば尚更だ。

「…そうですね。」

もうため息さえも出ない。

「お前の部下の犬コロみたいな三島くんはどうした?飼い犬みたいにずっとお前にまとわりついてるだろ?」

「…まあ彼も頑張ってくれたらしいんですけど…こればっかりは。」

「ん?まさか引き留めきれずに泣いて詫びでもいれられたのか?」

「え?…ああ、まあ。泣いて謝ってきましたけど…ちょっとその後が。」

ここから先は言いにくくなってしまい言葉を濁すためのアイテムが欲しくなった。

しまった、形だけでもコーヒーを手にしておくべきだったと後悔しても遅い。

まさか彼の話になるとは思わなかったから途端に居心地が悪くなったのだ。

「その後が、何?」

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