21時の憂うつ
飄々と私の怒りをかわしていく様からは全く反省が感じられない。

これは無駄だわ、エネルギーの無駄。

「もう今日は何だっていうんですか!私、忙しいんで失礼します!」

「だから待てって、日比谷よ。」

また歩き出そうとする私の手を強く掴んで動きを止めた。

「ちょっと先輩、触りすぎ…!」

文句を言って振り払ってやろうと振り向いたが、その思いは儚く砕かれる。

「話の続き、まだ聞いてないんだけど。」

「…はっ!?」

逸らすことを許さない強い眼差しは言葉と共にまっすぐ私の方に向けられていた。

まるで射ぬかれたみたいだ。

揺れていても視線を外すことが出来ない。

「三島くんと何があった?」

「べ、別に…。」

「告白でもされた?」

突然の言葉に私の肩が大きく跳ねた。

何にも無かったように平常心でいなきゃいけないのになって様なの。

やばい、顔が熱い。

これじゃ正解だと言っているようなものじゃないか。

「ち、近いです!離して。」

とてもクールにかわせる精神状態じゃない私は完全に混乱していた。

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