終わる日のこと。
「お母さん、行ってきまーす」
「ああ、紗央莉、お弁当お弁当」
「忘れてた(笑)」
私はお母さんからお弁当を受け取り、庵と一緒に玄関に向かった。
お母さんは、玄関まで見送ってくれる。
それも日課だ。
うちにはお父さんがいない。
お父さんが私たちに危害を加えるので、お母さんが別れようと切り出したんだ。
当然お父さんが納得する訳が無くて、随分揉めたみたいだけど、何とか離婚調停まで持ち込むことができたらしい。
私たち姉弟は、よくお父さんに殴られたりした。
そのことで、お母さんは私たちに後ろめたさを感じているようだ。
だから、お母さんは私たちに妙に過保護。
でも、お父さんと別居してから、平穏な毎日を送れているのは、お母さんのおかげ。
私は別に、お母さんを恨んではいない。
それはきっと、庵も同じだと思う。
「「行ってきまーす!!」」
二人でお母さんに声を掛けて、私たちは玄関を出た。
今日もいつもと同じ一日に違いないと、信じて疑わずに。
それが間違いだったのだと、私と庵が気づくのは、もう少し後のことだ。