こんなお葬式【長篇】
常識の範囲内であればどこへでも走り料理を届け、客が一人であっても要望があれば同じサービスを提供した。

そう、今回のように一人であっても同じサービスを受ける事が出来るのだ。

しかし、仕出屋の売上と労力を最も知るだけに、一度断る素振りを見せたおばあさんにはクドクドと料理の意味合いを説明はしなかったのである。

僕がまだ料理屋に勤務していたのであれば、間違いなくしたであろう説明……。

お客様の事と売り上げの両方を考え、その上で最も適した懸命な営業努力をしなかったのは、やはり「葬儀」と云う物の見方が葬儀社としてのそれに変わって来ていた現れだろう。


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