こんなお葬式【長篇】
呆れて手元に視線を移すと、またもや手には大きな紙袋を下げていた。

─何してたんですか!

時刻は9時33分──。

僕は少し怒り調子でそう言いながら、何時か見て下さいと言わんばかりに時計を見た。

─あれ、10時から…でしたよね……?

キョトンとしたその表情に悪気が全く伺えないおばあさん。

(やっぱり昨日、最後の確認をするべきやった……。)

そう思いながらも、取り敢えず何事もなかった安心感と、自分の詰めの甘さへの反省からそれ以上の怒りの感情は抑えながら言った。

─何処行ってはったんですか?喪服を着てるっていう事は家に帰られてたんですか?言ってもらえたらお送りしたのに……。

この後、おばあさんの不可解な行動の理由に、またしても僕は驚かされる事になるのである。


< 121 / 257 >

この作品をシェア

pagetop