こんなお葬式【長篇】
病室のベッドからストレッチャーへの移動は、一番始めにそのご遺体に手を触れる瞬間である。

僕らは揃って手を合わした。

一人が頭に、もう一人が下半身に手を入れ、小さく合いの手を入れながら一気に隣のストレッチャーへ。

やはり死後硬直が始まっている為、足は伸びたままだ……。

手は死亡時の病院側の処置の為、胸元で指を絡ませ、紐で縛っている。

老人で闘病後のご遺体は、ほとんどが痩せこけ、重みはさして感じない。

人は人生を費やし、様々な見えない重みを増やし積み上げ、

一方で、生き様の重みの数だけ、身は軽くして行く……。

ストレッチャーへ乗せ終え、乱れた浴衣を丁寧に整える。

専用の布団で体を覆い、再び手を合わし一礼した。

おばあさんは、動作の一つ一つを“何が起こるのか”というような目で、心配そうに見ていた。

< 16 / 257 >

この作品をシェア

pagetop