こんなお葬式【長篇】
何度となく足を運んだ火葬場。

この扉を閉じた時、大切な人間の「形」すらなくなってしまうのだ。

忘れていた感覚が何故か強く胸を打つ……。

職員の説明の間、おばあさんはウンウンと頷き、相変わらず真剣に話を聞いている。

真っ直ぐに「死」に立ち向かうおばあさんに、ただ悲しみにくれるだけでは駄目だという事を教わっていた。

と同時に、仕事を理由に忘れてしまっていた、大切な人の「死」の感覚を思い出させてくれたのかも知れない。



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