こんなお葬式【長篇】
─おとうちゃん、明日の11時出棺で小部屋やから。

本来は、式日取りを決める際に、火葬場に電話して空き時間を確認する。斎場にもよるが、「釜」の数が決まっているのだ。

本日は全ての説明を最優先させた為、見積り作成後に電話。翌日の11時~11時半で押さえる事が出来た。

その後寺院にも連絡し、通夜なしの葬儀のみ、格安料金でのお願いも終了。快く引き受けてくれた。

─決まったんやな。人数は?

─おばあさん一人。それと通夜式はなしやねん。

─へぇ~……。

─取り敢えず、一時に納棺に来るわ。

田下さんはいつも、何時であっても仕事が入ると打合せが終わって落ち着くまで、事務所で待機していてくれる。宿直という仕事も大変なのだ。

田下さんの様に、会館管理とは別に会社での宿直の仕事をする者も居る。依頼の電話を受ける係である。葬儀は何故か、深夜の請負が多い仕事なのだ。

─あ……。おとうちゃん、もし手が空いてたら焼香だけでもあげに来て貰われへんかな。何せ一人やから……。

そう言い残し、僕は社に戻った。


田下さんは笑顔で頷いてくれた。

< 57 / 257 >

この作品をシェア

pagetop