こんなお葬式【長篇】
静かに車を止め『ストレッチャー』
と呼ばれる、車輪付きのタンカを降ろす。

確実に“この世には居ない”人を迎えに行くベッドだ。

到着すると、中に入る前にまず守衛に到着を報告をする。

─お疲れさまです。搬送です。501の武本様です。

─あぁ、早いな。今は出られてるみたいやけどねぇ……。

─はぁ、みたいですね。戻られたらすぐに支度出来るように待機してますんで……。



カタカタ……

カタカタ…カタ

コツコツ

コツ……コツ…

静かな病院の廊下。

カタカタ……カタ

ガシャ……ン

段差の度にキシむ車輪と、革靴の踵の音。

静まった院内に響く音は、妙に耳に付く。
夜の病院は、それだけで奇妙な雰囲気がある。音がそれを増加させて行く。

薄灯りの中、黙ったまま歩く。
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