東京血風録2-緋の試練







 霧華拉致から、丸2日が経った。


 
 男は大いに悩んでいた。
 うまく事が進んでいるとは思えなかった。元来、犯罪に身を染めるようなことは考えられないような、温厚な性格だった。
 鬼児に取り憑かれ操られておいても、この違和感は拭うことができなかった。

 霧華には、トイレに行くことだけを許していた。
 それ以外、テレビも何もない部屋で過ごすことを命じた。食事は与えてない。
 霧華は丸2日何も食べていなかった。水は自由に飲むことができるので、脱水症状になることはなかったが、さすがに空腹を満たすことはなかった。 
 男を刺激しないよう、霧華から食事の要望をすることもなかった。限界が近づいていた。








 摂津秋房は、男の存在を気にしていた。
 鬼児の気配を辿れば、見つけることは容易いハズだ。
 動かないと決めたのは、感じる不協和音からだった。自身が思い描いた図式と全く違う次元で事が進んでいる。
 それは、不本意過ぎて笑ってしまうほどだった。笑いは度を過ぎると、怒りに換わる。
 その寸前だった。









 遥と飛鳥の捜索は、あさ早くから始まった。駅を三駅ほど進んで、捜索範囲を広げていた。
 遥は姉の容体が気になった。元々、大病はしないとはいえ、身体が細身の上食も細い。ちゃんと食べていれば、心配もないが危害が加えられてないかとか、考えると限がなかった。




 
< 10 / 37 >

この作品をシェア

pagetop