東京血風録2-緋の試練
遥と大鉄である。
遥の打ち込みは、20発を超えた。
打ってこいとはよく言ったもので、全くビクともする気配がなかった。
全て丸太のようなその腕にブロックされ弾き返されていた。
大鉄の主な攻撃は、両腕の丸太棒を振り回すモノで、巨体の見た目同様スピードはさほど無く、遥が打ち込み大鉄が返す。それを遥が交わして、と同じような展開が続いた。
一度は腕の直撃を黒の木刀・伊號丸で受けて、みしりと音が鳴りヒヤッとしたものだった。
考えてみれば、摂津に折られて復活した初戦が大鉄というのは、分が悪いとしか云いようがない。
しかし、黒の木刀は黒檀の持つ粘り強いしなりをもって、強力な打撃を受け流していた。
遥が幾分距離をとってから、伊號丸に訊いた。
(伊號丸、紅蓮斬を試したい)
(ほほう)
伊號丸はまんざらでもない応答をした。
紅蓮斬・・・・堕ちていた遥が復活した時に提案してきたものの中に、それはあった。
多めの念を伊號丸に流す。それを剣鬼・伊號丸が蓄える。その念を伊號丸本体に流すが、その際電気で言うところの抵抗をかける。伊號丸を加熱する。その熱を利用して相手を断ち切る。というものだった。
その時、木刀なので加熱し過ぎるのを伊號丸が防ぐこともお忘れなく、だ。
提案はしたものの、訓練も何もなかったのだ。この修業の旅で全て構築されるハズだったのだから。
ここで、試そうというのも摂津秋房に対戦相手を要請した時に、想定していたことであった。今更、下がる気は毛頭ない。
十分距離を取った所で、遥は念をおくりはじめる。念とは念力、念力は気、気は気力。全ては身体の中に巡る、太古からの叡智なり。一つ一つは小さいが繋げることで大きな力となる。
伊號丸に念が集まってくる。
そこで伊號丸は、あることに気が付いたのだ。
念の質が変わっておる!
何がどう、と説明しようとすると困るが遥の念は、もっとこう、柔らかかったはずだ。この集まってくる念の質はなんだ?
怨讐か、怨嗟か、、、、。
何にせよ、凶の気しかない、
よからぬ事のないことを祈ろう。
斜に構えた遥の手の先、伊號丸が赫々と輝いた。