東京血風録2-緋の試練






 両の腕を前に突き出し、紅蓮斬の衝撃波を受けようとした大鉄であったが、その衝撃波を受けて、後方へのけぞった。
衝撃波は赫い赫い筋となり、大鉄の身体の中心に縦長の疵痕を付けた。

 刹那、大鉄の身体の後方へ黒い霧のようなモノが噴出すると、きぃぃぃぃぃっ!と
鬼児の断末魔を残し、霧散した。

 大鉄自身は、正に憑き物が落ちました然とし、その場に立ったまま気絶していた。



 勝った。
 立ち尽くしたまま、遥は余韻に浸っていた。
 その時、飛鳥がガッツポーズをしながら勝ち鬨を上げるのが見えた。飛鳥も勝利したようだ。
 大体同じくらいの時間で決着がついたようだった。



 王道遥・対大鉄戦勝利。

 藤堂飛鳥・対無良戦勝利。




 遥が歩み寄り、肩を並べた。
 お互いの顔に自信が漲っていた。
 
 大鉄の鬼児は消滅した。無良の方は鬼児自体はそのままなので、遥が鬼児を突き出し、霧散させておいた。

 大鉄と無良の身体を残して、校門を目指した。

 遥は校門を抜けると、鬼の結界が消え去ると思った。
 しかし実際はそうはならず、不安をかんじた。
 
 伽藍学園の校門の前、道路を挟んだ向かい側には民家が並んでいた。鬼の結界の中人気のない通りで、一軒の民家の門柱の横に学生服の男がいるのが見てとれた。

 ニヤニヤと笑顔をつくる男だった。
 遥と視線が合うと、逸らさずに見据えたまま立ち上がり、一歩二歩と歩み寄ってくる。顔にはニヤニヤが張り付いたままだ。

 その時、遥の携帯の着信音が鳴り響いた。遥も視線を外さず、ズボンのポケットの中から携帯を取り出すと、そのまま飛鳥の方へ放り投げた。


 慌てた飛鳥は、右往左往しながらもキャッチに成功した。
「出ていいよ」
遥が言い放った。
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