東京血風録2-緋の試練
5 決着
藤堂飛鳥は、王道遥から渡された着信音鳴り響く携帯電話を通話にする。
耳にあてがい、大声で話しかけた。
「もしもし、こちらは王道遥の携帯電話です。今遥が手を放せず、藤堂が代わりに応対しております」
男は何が何やら判らなかった。
自分は、摂津秋房に会いに行こうとしていた。
しかし、ドアを開けたら、摂津秋房がいるではないか。
これはどういう事なのだろう。
自分の願望が叶ったのだろうか?
現実化した?何故此処に????
訳がワ・カ・ラ・ナ・イ
男は思った。
摂津秋房は電話している。
ダ・レ・に・ダ?
「王道遥ではないのだな」
摂津秋房である。
「あぁ、そうだ」
答えたのは藤堂飛鳥。携帯電話でのやりとりである。
「彼に伝えたまえ。姉の居場所がわかったとな」
飛鳥は小躍りしそうになるのを必死に堪え、ただ一言”霧華さんの居場所が分かったって!。と、遥に伝えた。
遥は安堵した表情で小さく頷いた。顔は正面を向いたまま。
「今から住所を云う。覚えられるか?」
飛鳥は内心カチンときたが、そんなこと臆面にも出さず「はい」とだけ答えた。
男はそんなやりとりを、ジッと見つめてしまっていた。身動きがとれない。
ずっと見ている内に、摂津の中にある感情に気が付いてしまっていた。
“怒”の感情に。
このままではヤバい。状況的に、そう物語っているのに体が動かない。
どうする?どうする?
何とかしなきゃ。
あ!
そんなこと考えているうちに、摂津の左手がこちらに伸びてきたかと思うま、胸の中にめり込んでしまった。
打撃でもなく、穴も穿かれず、また痛みもなく、出血もない。
???????????????????
考える間もなく、引き抜かれた摂津の手には、潰れた鬼児の姿があった。
「ひぃえぃあぁああぁああぁぁぁっ!!」
叫びと共に男は、膝から崩れ昏倒した。
その様子を睥睨しながら、摂津は冷静に会話を続けた。アパートの在処を簡潔に伝えていった。
その間、部屋の中を覗き、状況を把握していった。
アパートの場所を聞いた飛鳥は、分かったと言って電話を切った。
摂津秋房のそれからの行動は。
自身の胸から、新しい半透明の鬼児を引き出すと、倒れた男の身体の上にぽいと投げ置いた。鬼児はもぞもぞと穴を掘る仕種で男の体の中へ入っていった。
男はパチリと目を開けた。
「もう一働きしてもらおうか」
摂津秋房は独りごちた。