東京血風録2-緋の試練






 霧華の倒れている部屋である。

 流れ出た血液で、赫く染まった室内。
 霧華は元々貧血気味で、血が人より薄い
方だった。
 その色は真紅というより、むしろ緋色。

 緋色に染まる部屋の中で、霧華は独りその時を迎えようとしていた。
 生命の灯火が消えようとしていた。






 摂津秋房は、アパートを後にした。
 
 新しい鬼児を取り憑かされた男・貝原はアパートの部屋へ登る階段に座り、新たな訪問者の到着を待った。
 それが新しくもらった任務であった。





 伽藍学園前、遥と飛鳥。その前に奇妙な男が立ちふさがっていた。
 
 摂津との電話内容は、簡単に伝えた。
 遥は飛鳥に、その場所へ行ってくれとお願いした。この場は僕が引き受けるとも。

 走って10分少し掛かるだろうか、藤堂飛鳥は走り出した。
 その背中に、よろしくお願いします、と遥は声をかけた。



「なんか、切羽詰まってますな」
 遥の前の男は、場に似合わない声で話しかける。顔にはニヤニヤが張り付いたままだ。
「急いでいる。手早に済ませたい」

 鬼の結界の中、人通りのない道路上2人の男が対峙している。
「自己紹介9らいさせて9れよ。俺の名前はセプテンバーてんだ、よろし9」
 男・セプテンバーの話である。 
いちいち“く”の所で“9”が入り込んで、微妙なイントネーションの違いで分かる、非常に耳障りだった。



 遥は、鬼児を切り離すことに重きを置いて闘うことだけ考えた。
「9段下から~9十9里浜まで~9り出し多ことあるか~い?俺はあるぜ~」

  
 ワケのわからないことを口走る奇妙な男だが、遥は思っていた。今の自分に必要なのは、こういった特殊な人種なのだ。これらを超えることによって、摂津秋房にいる領域に達することができるであろうと。
< 21 / 37 >

この作品をシェア

pagetop