東京血風録2-緋の試練
霧華の倒れている部屋である。
流れ出た血液で、赫く染まった室内。
霧華は元々貧血気味で、血が人より薄い
方だった。
その色は真紅というより、むしろ緋色。
緋色に染まる部屋の中で、霧華は独りその時を迎えようとしていた。
生命の灯火が消えようとしていた。
摂津秋房は、アパートを後にした。
新しい鬼児を取り憑かされた男・貝原はアパートの部屋へ登る階段に座り、新たな訪問者の到着を待った。
それが新しくもらった任務であった。
伽藍学園前、遥と飛鳥。その前に奇妙な男が立ちふさがっていた。
摂津との電話内容は、簡単に伝えた。
遥は飛鳥に、その場所へ行ってくれとお願いした。この場は僕が引き受けるとも。
走って10分少し掛かるだろうか、藤堂飛鳥は走り出した。
その背中に、よろしくお願いします、と遥は声をかけた。
「なんか、切羽詰まってますな」
遥の前の男は、場に似合わない声で話しかける。顔にはニヤニヤが張り付いたままだ。
「急いでいる。手早に済ませたい」
鬼の結界の中、人通りのない道路上2人の男が対峙している。
「自己紹介9らいさせて9れよ。俺の名前はセプテンバーてんだ、よろし9」
男・セプテンバーの話である。
いちいち“く”の所で“9”が入り込んで、微妙なイントネーションの違いで分かる、非常に耳障りだった。
遥は、鬼児を切り離すことに重きを置いて闘うことだけ考えた。
「9段下から~9十9里浜まで~9り出し多ことあるか~い?俺はあるぜ~」
ワケのわからないことを口走る奇妙な男だが、遥は思っていた。今の自分に必要なのは、こういった特殊な人種なのだ。これらを超えることによって、摂津秋房にいる領域に達することができるであろうと。