東京血風録2-緋の試練








 遥とセプスである。

 セプスに近寄ることは、非常に危険だった。
 全身に顎(あぎと)を発現することの出来る男。

 鬼児に取り憑かれただけでは、こうはいかない。
 所詮は人の身体を操っているに過ぎないからだ。

 では、セプテンバーは?

 この男、鬼である。
 摂津秋房に仕える、鬼の一族なのだ。

 身体能力が、人とは格段に違う。
 不用意に交戦してはいけないのだ。


 距離を開けて、遥も自分の浅はかさに気づいていた。大鉄との戦いと失血とで、既に限界に近づいていた。

 あと一撃。
 
 この一撃に全てを賭ける。



 伊號丸は遥の念を感じていた。弱々しいが、芯はブレておらん。
 ただ、体力が限界か。

 同調。
 我々が目指すのはそれだ。
 お互いに信頼しあい、己の全てを託すのじゃ。さすれば、自ずと技は進化する。
 全てはそこだ。


 遥はバットを握るように木刀を構えた。
 そこから切っ先を、セプスの方へ向けるため傾けていく。木刀がほぼ水平になったとこらで、膝を曲げて身体を前屈気味にする。
 そこで遥は、伊號丸に話しかける。
(伊號丸、一度話しただけだけど、血風ツー行こうか)
(血風2《けっぷうツー》じゃと!!)

 この状況で、この状況で打てるのか。

(いけるの、か?)
(ここ、いかなきゃ。次は無いかもね)
 自虐的じゃが、遥の意思に迷いはないようじゃ。
(いこうぞ!遥殿!)





 血風ツー。
 正式名称、遥奥義血風吹きあれんver.2
Next Generation。

 通常の血風吹きあれんは、気流のながれが切っ先から手前に流れる。
 遥の念を伊號丸の力で木刀内に溜める。
 その放出は、逆方向への気流を生む。
 手前から切っ先へ。
 
 即ち、木刀を中心に2つの気流が、逆回転で交差し渦巻く。念を含んだ、逆回転の気流に触れたモノは、忽ち霧散消失するであろう。
 正の赫と、負の蒼。2つの渦が交わった時、それは綺麗な薄紫色になった。
 
 黒の木刀が薄紫に染まる時、それは相手の終焉を意味するのだ。



 薄紫の木刀を構える遥を前にして、
「999999、新しいね~。9るし紛れなんてのは止めて9れよ」
とセプテンバー。
< 24 / 37 >

この作品をシェア

pagetop