東京血風録2-緋の試練
遥は足を一歩前に出した。
それと同時に剣を突き出した。
踏み出さない。ただ、それだけだぅた。
危険を察知したセプテンバーは、身構えた。両脚に力を込め踏ん張った。
遥の腕先伊號丸から、薄紫色の渦が伸びていく。細く細く細く。錐状になった薄紫渦は、セプテンバーの胸の中心へ真っ直ぐ伸びていた。
渦巻きが届く前に、セプテンバーの胸に大きな穴が穿かれていた。
その穴へ渦は吸い込まれるように入っていく。入る刹那、渦巻きは幅を広げ穴の内壁・肉壁に迫った。
「ひぃやひょ~!」
セプテンバーは叫び、肉壁から生えた小さな牙で渦を噛み砕こうとした。
がぶり。
胸の顎(あぎと)が渦巻きを噛んだ瞬間、小さな牙ごと、胸の肉片が爆散した。散り散りになった肉片はしゅうしゅうと霧散していく。
雄叫びをあげ、右手を上顎に左手を下顎に変化させたセプテンバーは、それでもまた噛み散らそうとするのだが、結果は明白だった。両の腕が爆散した。
そこでセプテンバーは、遥の方を見るのである。
遥の姿は、眼前にあった。剣を構えた姿で。
眉間に突き刺さる、薄紫色の木刀をセプテンバーは見た。
○?●○×●!○●△○●?▼○$●
セプテンバーは、声にならない叫びをあげた。
左右のこめかみの辺りがボコリと膨らんだかと思うと、そこから一対の骨片が生え出た。
角だった。
遥は木刀を下へ引いた。セプテンバーの身体は真っ二つに分かれた。
しゅう!と霧があがると、セプテンバーの身体は、渦の力にもより舞い上がりながら霧散していくのであった。
遥勝利。
余裕に浸る間さえなかった。
疲労困憊であった。
その場に倒れ込もうとする遥を、伊號丸が呼び止めた。
この場で倒れるのは得策ではないと諭され、霧華のいるアパートまで行くこととなった。
血に染まる脚を引きずりながら、アパートを目指す遥だった。