東京血風録2-緋の試練









 遥が現れてからはこうだ。

 すぐさま、真琴が遥の治療に入った。
 真琴の状態も良くはなかった。
 大粒の汗を浮かべ、体力も限界に近いようだった。それでも、急を要するということで施術に入ったのだ。

 説明を聞いていると、傷などは治せるが血液は作れないらしい。
 霧華の場合、録に食事も取っていないようなので、危険な状態だから輸血と入院の必要があるだろうということ。

 遥も失血しているが、そこまでしたくないという遥の強い意志が、入院を阻ませたのである。



 アパートの部屋に救急隊員を呼ぶのはまずいだろうということで、遥は真琴を連れてタクシーで、遥のマンションへ。
 飛鳥は、霧華を連れて通りまで出て、倒れている人を救護した体で、救急車を呼んだ。霧華の意識が戻ってないので、その辺のことは大丈夫だろう。


 


 そして、丸2日。
 藤堂飛鳥は、マンションと病院を行き来した。何度も。

 マンションの2人、王道遥と龍王院真琴はそれぞれに、体力を奪われ過ぎて2人共目を覚まさなかったのである。水分補給と身体のケアとを、数時間おきに飛鳥がしていた。

 王道霧華は、輸血した後栄養失調症が見つかり、点滴を打つ生活となったが、意識は戻らなかった。

 飛鳥は、ひどい孤独感を味わっていた。霧華以外は意識が戻ることは分かっているから心配ないが、霧華はどうだろう。
心因性外傷も考えなければならない。
 まずは、意識が戻ること。それが最優先事項だった。




 そして、3日目の朝。
 
 飛鳥がリビングのソファーで寝ていると誰かに、肩を叩かれて起こされた。
 そこにはは、遥が立っていた。清々しい顔で、ありがとうと呟いた。
 飛鳥は不覚にも、泣きそうになった。
 こんなに嬉しいことはない。

 近況の報告と、病院に行きたいという遥の意見、霧華の意識が戻ってないことなどを話していると、寝室のドアを開けて真琴が現れた。
 話し声を聞いて、パッと目が覚めたのだった。
 
 真琴は、下を向いてパジャマを着ていることを確認すると途端に赤面して、飛鳥の方へ走り出そうとする。
「お前!こんなっ!」

 走ろうとしたのだが、2日間休んでいた筋肉はそれを赦さず、脚がもつれて前傾した。すかさず飛鳥が肩を抱き止めて停止した。真琴はきっ!と飛鳥を睨みつけたが、
「ありがとう」
と素直に返した。
「お腹が空いた」とも。

 着替えて、出掛けで軽い軽食でも取りながら、病院へ向かおうと決まり、それぞれ準備を始めた。







 そんな時だった、偶然のタイミングとはいえ、これほど揃う事があるとは。

 京都、鳳竜堂柊一からの電話であった。



 
< 27 / 37 >

この作品をシェア

pagetop