東京血風録2-緋の試練
第2章 彼の地へ
1 起動
電話の会話の中で、柊一にこうも告げられていた。
御業(みごう)の結界の使用権限についてだった。
ただの自然の中の霊的な場所ではない。
人の叡智の結晶である御業の結界は、現在も人の手に依って、管理保管されているのであった。
その使用許可を申請・受理してもらうため、守り人に会わなければならないとのことだった。
準備期間も考慮して、3日前には現地に着きたいということも。
一連の霧華拉致軟禁事件により、丸一週間を棒に振った。
3日前に長野県○○村に着いているのであれば、こちらにいられる時間はあと3日しかない。
覚悟は決めていた。
しかし、帰ってこれる保証は何処にもない。
あと3日で、しておかねばならないことは何なのか。やり残していることはないか考えるとキリがない。
遥は途方に暮れた。
そんな中、霧華の病室に着いたのだった。
霧華の病室の前、遥たちと入れ違いで出て行った人物があった。
遥たちとは、逆の方向へ歩いて行ったので顔は見えなかった。カーキグリーンのジャケットに、これまたカーキグリーンの
ワーカーパンツを履いていて、セミロングの茶髪はキレイにウェーブしていた。
遥は追ってお礼を、とも考えていたのだか、身体がそれを拒否した。前方を歩く男が発するなんとも近付き難いオーラに、完全に気圧されていた。