東京血風録2-緋の試練
立て札の後ろに出来た小径を、柊一が先立って歩き、後の3人が続いた。
ふ
尾の飛鳥が小径に入った時、その声はした。
小径の先は見通しのよい原っぱだったのだが、先ほどまで明らかに人影のない左手前方に男が立っていたのである。
屈強な体格のその男は50歳ほどで、口の周りに蓄えた口髭に白髪が混じっていた。
浅黒く灼けた肌は、農業で培われたものであろうと推測された。
「誰じゃ、何しに来た!」と、男。
柊一は少しも動ぜず、鳳竜院ですと告げた。
男は返す。
「よく参られた。儂は御業の結界保管委員の源仁と申す。源さんとでも呼んでくれ」
そう言うと、源さんは左に一歩だけ移動した。
源さんの陰に隠れて見えなかったが、小柄な老婆がすぐ後ろに立っていた。
濃いめの桔梗の色をした着物を着込んでいた。
うっすら笑みを浮かべて、こちらを見ている。
「こちらは、御業の結界保管委員会第8代目代表、おタカさんじゃ」
と、源さんが付け加えた。
「7代目ですよ」
と、おタカさんが穏やかな声で制した。
源さんは顔を赤らめながら、俯いた。その瞳が濡れているような気もしたが、気がつく者はいなかった。
柊一が連絡をしておいたのであろう、彼らはここで待っていたのだ。