偽物シンデレラ
…お節介になるわ。
あんなにも悲しそうな顔されたら。
それほど貴方は舞踏会に行きたいのでしょう?
「わたしの名前を貸すわ」
そう言うと彼女は目を見開いた。
「名前が無いのでしょう?
だからわたしの名前で舞踏会に行きなさい」
『でも、それは…』
おどおどとする彼女。また黙ってしまう。
そんなになるほど不安なの?
なにをそんなに…
「…どうしても行きたい理由があるのでしょう?」
そう言うと彼女の目に涙が少しだけ浮かんだ。
…こんなにも綺麗な涙があるのね。
わたしはその時、今まで気付かなかった何かを知った気がした。
彼女のその表情が指し示すものは。