偽物シンデレラ
でもね…
王子様と会ったことを覚えているのはきっと、
私だけなの。
王子様は私のことなんて覚えてない。
そう思うほど、胸が痛くなる。
辛いなんて思っていい立場ではないのにね。
『ほら、行きなさい!時間なくなっちゃうわ!』
笑顔で私の背中を押してくれるシンデレラに、
別れを告げてカボチャの馬車で走り出す。
キラキラと光るガラスの靴。
赤い髪と正反対のような、透き通る色をした青のドレス。
ああ、赤い髪が目立ってしまっている。
でも母譲りのこの髪の色を変えるのはとても嫌だ。
「会いたい…」
忘れられてても構わない。
話せなくても構わない。
それでもいいから、
もう一度貴方に会いたい。