今日、雨が降ったら【短編】
「ご結婚おめでとうございます」


「あれ？聞いた？大畑から？」


「いえ、経理部にいるので処理の関係上個人情報を得てしまいました」


「そっか〜」


と言い、照れながら少し嬉しそうに笑顔を見せる葛城さん。


「今日で最後なんですね」


「うん、なんか変な感じだな。ずっと本社勤務だったから」


「…そうなんですね」


「それにこうやって雨の日に小早川さんと会うことももうないんだな」


「そうですね…」


その瞬間、目頭に熱いものが込み上げてくるのを感じたがぐっと堪えた。


「俺…、今まで雨の日ってあんま好きじゃなかったけど、バスで小早川さんと話ができるから結構楽しかったよ」


「えっ…」


「雨の日がちょっと好きになった。今までありがとう。仕事まだ慣れないこともあると思うけど、頑張って」


そう言って頭を軽く叩いてきた。


そんなの…反則だよ。


「私も葛城さんと話せて楽しかったです。海外に行ってもかっこいい葛城さんのままで居てください。それと…」


……言葉が続かない。


葛城さんはそれを理解してくれたのか、ありがとうと返事をし、そこで


バスは停車した。



そして、私の恋は


降り注ぐ雨とともに幕を閉じた。



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