リナリアの王女
 あれから私はベッドに横になりながらこれからの事を考えていた。
どうやらこれは夢ではないようだ。
いくら待ってみても夢から覚めるという事はないだろう。


私はこれからこの世界で生きていかなければいけないのだろうか・・・。


この世界の風習も分からず、更にはこの世界の国王の婚約者という立場で私はやっていけるのだろうか・・・。
私はおそらく一般家庭で育っているはずだし、そんなに教養もないはずだ。
そんな女が国王の婚約者だなんて・・・周りの人は反対しないのだろうか・・・?
考えれば考えるほど悪い事しか考えられない。

ふと、クラウドに会いたいと思った。
彼ならば私のこの不安をどうにかしてくれるのではないだろうか、と。


そこまで考えて私は愕然とした。
確かにここ最近夢では毎日彼を見ていた。
しかし実際に会って言葉を交わしたのはさっきが初めてなのに、しかも私にも要因があったとはいえ、勝手に異世界に連れてこられたというのに、私は彼を信頼しているというのか。


私の事を愛していると言ってくれた。


その言葉にきっと嘘はないだろう。
そして私はその言葉を言われて嫌な気持ちにはならなかった。
しかし、まだ彼が私の事を想ってくれているほどの気持ちを彼に返せるのかと問われれば否だ。
冷静に考えて、私はまだ彼に好意を抱いているとは思えない。
きっとこの世界で頼る事が出来るのが彼だけだという事が頼ってしまう要因に大きく関係しているのだろう。

しっかりと考えなくては。
頼って甘えて、自分では何も考えないなんて事になってはいけない。

ここは異世界で、自分のいた世界とは違う事も多いだろう。
しっかりと自分の足で立って、物事を考えなくてはいけない。



< 10 / 96 >

この作品をシェア

pagetop