リナリアの王女
 『エリーゼさんは、あの、本当に異世界から来られたのですか・・・?』


聞いても良いのか分からないという感じで遠慮気味に聞かれた。
「そうみたい。私もまだ信じられないんだけど」
『そんな話が本当にあるんですね。それでしたらエリーゼさんはこちらの世界についてよく分からないんですね?』
「うん。窓から外を見てみたんだけど、なんだか景色も私がいたところと違うみたいで・・・」
『分からない事があったら何でも言って下さいね』
「ありがとう。明日は朝、クラウドが迎えに来てくれるって言ってたんだけど・・・」
『クラウド様からお聞きしております。顔見せですね?』
「そうなの・・・。顔見せって言われてもどうしたら良いのかわからなくて・・・」
『明日は城内の者だけですので、そんなに気を遣わなくても大丈夫ですよ。軽く自己紹介をするだけだと思います。明日の朝、クラウド様がお迎えに来られる前に私が来ますので、準備のお手伝いをしますね』
「私にはよく分からない事ばっかりだから、サラちゃんに準備を任せちゃっても良い?」


自分の足で立って、自分でしっかりと考えなくてはと思った矢先に、早速人に頼らなきゃいけない現状に情けなさを感じる。


『もちろんです。エリーゼさんがもっと綺麗になるように頑張りますね』
サラちゃんはとても張り切っているように感じる。
「人に見せれるぐらいにはなるようにお願いします」
『任されました』
また可愛らしい笑顔を見せながらそう言ってもらえた。
『それでは私はそろそろ戻らせていただきますね』
私はサラちゃんの仕事の事を考えていなくて慌ててしまった。
「長く引き止めちゃってごめんね?誰かに怒られたりしない?」
『大丈夫ですよ。ではまた明日来ますね』
「うん。ありがと」

初めと違うのは去って行く時に見せてくれたサラちゃんの笑顔。
それだけでサラちゃんに近づけた気がして嬉しかった。
一瞬でもこの世界でもやっていける気がした単純な私に苦笑が漏れた。


しかし思ったよりも悪い気持ちでもなかった。




< 16 / 96 >

この作品をシェア

pagetop