リナリアの王女
 
 ―コンコン―

『おはようございます。エリーゼ様、お入りしても宜しいでしょうか?』
サラちゃんが来てくれたようだ。
「入って良いよ!」

昨日と同じように静かに部屋に入ってきたサラちゃん。
「おはよう、サラちゃん!」
『おはようございます、エリーゼさん。早速ですが準備を始めても良いですか?』
もう一度挨拶してくれたサラちゃん。さっきよりちょっとだけ崩して話してくれる事が嬉しい。

「うん、お願いします。軽い身支度だけは整えたけど、あとどうしたら良いか分からなかったところなの。サラちゃんはいつも丁度良いタイミングで来てくれるね?」
『ありがとうございます。この仕事も長いのでタイミングを計るのは勘ですね。ではまず着替えましょうか』
クスクスと笑いながらサラちゃんが言った。

昨日の笑顔も可愛かったが、クスクスと小さく笑うサラちゃんも可愛い。

迷う事なくウォークインクローゼットに行き中を見始めた。
「この中に入ってる服って・・・」
『もちろんエリーゼさんの服ですよ。クラウドさんが直々に選ばれたものがほとんどですね。足りない物があったら言って下さいね?』
困る事のないぐらい服が入っているのに、足りないなんて事があるんだろうか・・・。
それよりもこの大量の服はクラウドが選んでくれたものなのか・・・。
『エリーゼさんは綺麗な黒髪ですから、赤いドレスが良いですかね・・・』
そう言いながら出してきたのはシンプルな赤いマーメイドドレスだった。
「そんな大人っぽいの似合うかな?」
『きっと似合うと思いますよ。もし違うのが良ければ探しますけど・・・』
「ううん、サラちゃんが選んでくれたものだもん。これにする」



ドレスに着られないと良いけど、と心の中で呟いたのは内緒にした。




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